ある日、弊所のお客様からこんなご相談がありました。
「対応先から、こんな問い合わせがあり困っているので助けてください」
そのお客様は、都心のとても素敵な新築マンションにお住まいでした。
ところが、トイレやバスルームへ向かう廊下の床を踏むたびに、ギシギシと大きな床鳴りが発生していました。
管理会社に何度も相談したそうですが対応してもらえず、やむなくお引越しをされることになりました。
その音を証拠として記録するため、弊所に床鳴り音の測定をご依頼いただいた、という経緯があります。
その測定結果を管理会社へ提出したところ、思わぬ指摘がありました。
「測定位置が基準と異なるため、測定結果はあてにならない」
資料を確認すると、その意見書を作成していたのは管理会社ではなく、弊所と同じ測定業者でした。
おそらく、報告書について専門的な確認を依頼されたのだと思います。
その答弁書には、こうありました。
「なぜ、測定位置をリビングや寝室などの主要な居室ではなく、廊下としたのか」
なるほど…。
測定業者らしい、とても真面目な疑問です。
音の測定位置
一般的に、居室外からの音を測定する際は、リビングや寝室など、
お客様が生活の中心とする居室で測定を行います。
ですが、今回のご相談は少し事情が異なりました。
お客様の苦情は、廊下の床を踏んだときに発生する音です。
つまり、音が発生する場所は廊下であり、苦情の発生地点も廊下なのです。
苦情が発生している場所を測らずに、基準通りに居室で測ることに、
果たして意味があるのでしょうか。
確かに、測定目的によっては、JISの基準に準拠することが重要です。
しかし、環境省などの資料には、こうも書かれています。
「苦情が伴う場合は、生活環境の保全の観点から、事例ごとに合理的に判断する」
今回の場合は、
・お客様からの騒音苦情に伴う測定である
・お客様ご自身が床を踏む際に発生する音である
・苦情の発生場所は、床を踏む場所、つまり廊下である
これらを考え、測定位置は廊下であるべきだと判断しました。
その後は特に指摘もなく、おそらく、
相手方の測定業者様にもご理解いただけたのだと思います。
測定前のヒアリングの大切さ
測定には様々な目的があり、それに応じた測定方法が求められます。
環境基準と比較するなら環境基準に定めた方法で、
条例を適用するなら条例の規定する方法で測定する必要があります。
一方で、苦情を伴う場合は、状況に応じた合理的な判断が欠かせません。
技術的に妥当で、科学的にも矛盾がなく、
公平性の観点でも適正な方法を選ぶことが重要です。
苦情に伴う測定では、一方的に決めるのではなく、
柔軟に対応することが何より大切です。
そのためにも、測定前の十分なヒアリングがとても重要になります。