最初はうるさいと思っていた環境も、毎日続くうちに、だんだん慣れて気にならなくなることがあります。
実際、私も地方出身で、初めて東京に出てきたころは、騒音の大きさに驚きました。
ただ、地方が静かで、東京がうるさい、といった単純な話ではないように感じています。
音を一つ一つのぞいていった先に、いちばん底に残る音のようなものがあります。
その「残る音」が、地方都市と東京では、どこか違う気がするのです。
この感覚、分かっていただけるでしょうか。
今ではすっかり都会の音に慣れてしまい、
たまに帰省すると、ふと訪れる静けさに、怖さを感じることさえあります。
慣れというのは、不思議なものだなと感じます。
そして、この「音への慣れ」は、時に驚くような現象を生みます。
ある時、近隣からの騒音苦情で測定を行ったことがありました。
解析してみると、深夜にもかかわらず、衝撃音が次々と記録されていました。
工事現場のような「ドスン」「ドカン」という音が、夜通し続いていたのです。
こんな環境で我慢を強いられているなんて、さぞお辛かっただろう。
そう思いながら報告書を提出しました。
すると、
「こんなに音がしていたんですね」
一番驚いていたのは、ご本人でした。
毎日繰り返される騒音に、いつの間にか慣れてしまっていたのです。
ただ、耳が慣れても、体の負担は消えないようで、
体調不良や睡眠不足を訴えていらっしゃいました。
「慣れ」は、防衛本能として働くことがあります。
しかし、それが問題の解決を意味するとは限りません。
どんなにうるさいと訴えても、
「そのうち慣れるよ」と軽く返されてしまうことがあります。
あるいは、自分自身にそう言い聞かせてしまうこともあります。
けれど、人によっては、
その「慣れ」が見えないストレスとなり、
やがて体調不良として表に出てきます。
これまでの測定事例を振り返ると、
そうした方は、決して少なくありません。
気にならず、日常生活に支障がないのであれば、
それが一番だと思います。
ただ、体調不良や睡眠不足が続いているなら、
音の問題も、QOL(生活の質)を下げる要因の一つとして、
一度、見直してみる時期なのかもしれません。