前回の「静かな環境」の測定事例では、自然豊かな場所が、必ずしもレベル的に静かとは限らないことをご紹介しました。
今回は、それとは対照的な「騒々しい環境」の測定事例です。対象としたのは、東京都内とその周辺地域の幹線道路沿いです。近年の測定事例の中から、特に印象に残っている道路を選びました。
道路沿いの騒音は、昼間に大きいのは想像しやすいと思いますが、実際に測ってみると、夜になってもあまり下がらない道路が少なくありません。前回の「静かな環境」と見比べると、その違いがよりはっきり見えてきます。
測定は、JIS Z 8731 や環境基準の評価マニュアルを参考にしながら行っています。ただし、今回の事例は建築物の遮音設計を目的とした測定であるため、一般的な環境騒音測定とは一部条件が異なります。たとえば、実測時間は毎時00分から30分間、測定高さは道路面から5mとしています。24時間の連続測定ですが、測定日は平日の1日のみです。
そのため、今回は数値そのものではなく、レベル変動図でご紹介します。具体的なレベルを知りたい場合は、各地域の市町村が公表している資料も参考になると思います。
なお、道路面から5mで測定しているのは、マンションなどでは1階がエントランスや駐車場の出入口となっていることが多く、道路に最も近い居室は2階となる場合が多いためです。実際の窓面高さを考えると、GL+5m程度がひとつの目安になります。
また、通常10分間で行うことの多い実測時間を30分間としているのは、より安定したデータを得るためです。測定時間を長くすると突発音の影響は受けやすくなりますが、突発音も繰り返し現れるのであれば、その地域の特徴的な音と見ることができます。実際にそこで暮らす方のことを考えると、短時間よりも、少し長めに測った方が地域の騒音環境を捉えやすいと考えています。
ただし、緊急車両や防災放送などのサイレン音は、その性質上、室内でも聞こえる必要がある音ですので、遮音対策の対象外として除いています。
ここで、グラフの見方を少しだけご説明します。
今回のレベル変動図には、等価騒音レベル(LAeq)とあわせて、時間率騒音レベルや最大値・最小値も表示しています。等価騒音レベルは、変動する騒音をエネルギー的に平均した値です。そのため、実際の騒音状態が違っていても、同じ値になることがあります。
たとえば下の4つの波形は、騒音の見え方がかなり違いますが、等価騒音レベルはいずれも 70dBA です。
騒音の状態がかなり違うのに、等価騒音レベルが同じというのは、不思議に感じられるかもしれません。これは、LAeq が「音の大きさの平均」を表す指標だからです。逆に言えば、LAeq だけでは、その音がどれくらい変動しているかまでは分かりません。
そこで参考になるのが、時間率騒音レベルです。たとえば LA05、LA50、LA95 は、測定時間内の騒音の変動幅を見るための目安になります。簡単に言えば、これらの差が大きいほど変動の大きい音、小さいほど定常的な音と見ることができます。
甲州街道のようにレベル変動が大きい道路では、時間率騒音レベルの差も大きくなります。
一方、保土ヶ谷バイパスのように、音がほぼ途切れず続く道路では、時間率騒音レベルの差が小さくなります。
つまり、等価騒音レベルで「音の大きさ」を見て、時間率騒音レベルで「変動の大きさ」を見ると、その道路の騒音の性格が少しつかみやすくなります。この点を意識しながら、24時間のレベル変動図を見ていきたいと思います。
それでは、ここから「騒々しい環境」のレベル変動図を、道路・地域別にご紹介します。
お近くの地域はあったでしょうか。
前半でご説明した見方を踏まえて見ると、同じように見える道路でも、騒音の性格がかなり違うことが分かります。たとえば、時間率騒音レベルの間隔が小さくまとまっている道路は、1日を通して定常的な騒音が続いていると考えられます。逆に、その間隔が広い道路は、車の通過ごとの変動が大きい道路だと予想できます。
保土ヶ谷バイパスのように、日中の凡例が非常に小さくまとまっている道路では、変動幅が小さく、音がほぼ途切れず続く定常的な騒音状態が見えてきます。一方、甲州街道のように時間率騒音レベルの間隔が広い道路では、1日を通して変動の大きい騒音状態が続いていることが分かります。夜間にその差がさらに大きくなる道路では、交通量が減っている一方で、個々の車の影響が目立ちやすくなっているのかもしれません。
予想通りと感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、夜間のレベルの高さは、想像以上だったのではないでしょうか。夜は交通量こそ減りますが、そのぶん速度が上がり、レベルが下がりにくくなっている可能性があります。特に首都高速の夜間のレベルは、とても印象に残ります。
今回は、印象に残った「騒々しい環境」の事例をご紹介しました。これらの道路は、都市部では特別なものではなく、同等以上の交通量を持つ幹線道路は数多くあります。特に夜間の騒音は、睡眠への影響も無視できません。前回の「静かな環境」と今回の「騒々しい環境」を見比べると、夜の音環境の違いが、数字のうえでもかなりはっきり現れていることが分かります。
都市部の騒音は、私たちの生活に少しずつ、しかし確実に影響しているのだと思います。