その「騒音」の苦しみを、見える形に。

 

騒音の国家資格者(環境計量士)が、騒音被害の実態を明らかにします。

暗騒音(背景騒音)とは何か

騒音測定を終えた時、お客様から、こんな質問を受けたことがあります。

暗騒音はどれくらいでしたか?」

この質問を受けた時、私は少し考えてしまいました。

本来の意味の暗騒音の事を言ってるのか、それとも夜間の騒音と言う意味なのかな?

お話の流れから考えると、どうやら夜間の騒音だと思われたので、
この時は、夜間の騒音として、回答しました。

暗騒音(背景騒音)の定義

背景騒音とは、従来『暗騒音』と呼ばれてきた、特定騒音以外のすべての音を指します。

騒音に関する規格 JIS Z 8731 では、従来「暗騒音」という用語が用いられていましたが、2019年の改訂では 背景騒音(background noise) という表現が使われるようになりました。

「暗騒音」という言葉は、「暗いときの騒音」、つまり夜間の静かな状態の音と誤解されることがあるため、このような表現の変更が行われた可能性があるのかもしれません。

しかし実務上は、このような理解が必ずしも完全な誤りとは言えない場合もあります。

本来、暗騒音とは 特定騒音以外のすべての音 を指します。
ところが、道路交通騒音のように常時発生している騒音を対象とする場合、日中は自動車や人の活動に伴う音が連続して発生しており、特定騒音と暗騒音を明確に区別することが難しい状況になります。

このような場合、実務では

・日中:特定騒音が連続している状態
・夜間:特定騒音が少ない状態

と捉え、夜間の静かな時間帯の騒音レベルを暗騒音として扱うことがあります。

したがって、「暗騒音=夜間の騒音」という理解は厳密な定義とは異なりますが、測定対象や騒音の発生状況によっては、実務上妥当な扱いとなる場合もあります。

暗騒音・残留騒音・特定騒音の違い

騒音測定では、次の4つの用語が使われます。

総合騒音
ある場所・ある時刻のすべての騒音
特定騒音
調査対象として着目する騒音
特定騒音(測定対象の音)を除く
暗騒音(背景騒音)
特定騒音以外のすべての騒音
さらに識別可能な音を除く
残留騒音
識別できる音を除いた残りの音

暗騒音(背景騒音)は測定者にとって、とても重要

ここまでのお話から、暗騒音は測定には不要な音、意味のない音のように思われるかもしれません。

しかし、測定者にとって非常に重要な存在で、
暗騒音を正確に把握することが、正しい測定を行うために不可欠と言っても過言ではありません。

その理由は SN比(信号対雑音比) にあります。

環境省の測定マニュアル等では、特定騒音と暗騒音との差が 10dB 未満の場合は既定の方法で暗騒音補正を行う事が求められます。

しかしながら、暗騒音(背景騒音)は固定値でないため、環境条件によっては普通に 3~ 5dB 程度変動します。
特に小さなレベル帯になる程、変動の差が大きくなるため、
正しく補正を行うには、かなり慎重な判断が必要となります。

このため実務では、暗騒音との差が十分に確保できる条件で測定することが重要とされています。

暗騒音の測定方法

特定騒音が発生していない時間の等価騒音レベルを測定する

測定時間の目安は

5~10分程度

とされています。

暗騒音が変動する場合は

・特定騒音の直前
・特定騒音の直後

のレベルを暗騒音として扱うこともあります。

暗騒音が問題になるケース

実際の騒音測定では、暗騒音の影響を完全に避けることは簡単ではありません。

特に都市部では

・道路交通騒音
・設備機器音
・遠方の交通音

などが常に存在しています。

さらに季節によっては

・セミの鳴き声
・虫の音

などが暗騒音として測定に影響することがあります。

このような場合

・測定地点の選定
・測定時期の検討

が重要になります。

まとめ

暗騒音(背景騒音)とは、特定騒音以外のすべての騒音を指します。

一見すると測定に不要な音のように思えますが、実際には騒音測定の精度を左右する非常に重要な要素です。

特に重要なポイントは次の通りです。

・暗騒音は特定騒音以外のすべての音
・特定騒音との差が10dB未満の場合は慎重な対応が求められる
・15dB以上の差があると暗騒音の影響は小さい
・測定地点や測定時期の選定が重要

騒音測定を正確に行うためには、対象となる騒音だけでなく、
その背景にある暗騒音の状態を正しく把握することが欠かせません。

また、暗騒音(背景騒音)そのものとは少し異なりますが、
条例等の中には、特定騒音との比較を行う目的で、
すべての指示値の平均値又は中央値を評価上の比較対象として扱う例があります。

たとえば、川崎市の「生活騒音対策に関する指針」では、
環境騒音値を「すべての指示値の平均値又は中央値」としています。

このように、騒音の評価では、
暗騒音(背景騒音)という用語上の意味と、
条例等で比較対象として用いられる値とが、必ずしも同じではない場合があります。

そのため、測定の目的や対応法令に応じて、
一般的な音響実務上の意味と、
条例・指針上の評価指標としての扱いを区別して理解することが重要です。