現代の騒音計はデジタル騒音計が当たり前で、環境計量で使われる騒音計では、演算機能付きの騒音計が主流です。
多くの計量証明事業所では、これらの騒音計で得られたデータを、専用の演算ソフトで解析しています。
しかし、数十年前は、アナログ針の騒音計が当たり前に使用されていました。
この当時の騒音測定は、常に振れ動くアナログ針を測定者が読み取り、記録していく方法がとられていました。
その中で用いられていた方法が、5秒50回法という測定方法です。
この測定方法は、5秒ごとに騒音計の指示値を読み取って、50個のデータを記録する方法で、この50個のデータから、累積相対度数分布図を作成し、中央値(L50)や 90%レンジの上端値・下端値(L5・L95)などを読み取っていました。
私が測定を始めた 30年ほど前には、すでにアナログ騒音計はほとんど見なくなっていましたが、環境計量士の国家試験の過程で産総研で研修を行った際に、アナログ騒音計による5秒50回法を実践した経験があります。
その時は、2人1チームで、1人がストップウォッチで5秒間隔で合図を送り、騒音計の担当者がその瞬間の指示値を読み取り記録する、という形で行われました。 この時、ストップウォッチ担当者が合図を送る際に測定者の方をポンと叩くことから、「肩たたき法」とも呼ばれていたそうです。

5秒50回法では、これを50回繰り返し、50個のデータを集めます。
このデータをレベルの大きさ順に並び変え、同じレベルの数を累積し、デシベルの累積相対度数分布図を作成します。
中央値(L50)とは、この累積相対度数分布図の50%に相当する値をいいます。
そのころの日本では、道路騒音の指標として、この中央値(L50)による評価が採用されていました。
ちなみに、90%レンジの上端値・下端値(L5・L95)とは、測定したデータのうち、小さい方から5%、大きい方から5%を除いた、中央90%の範囲を示す値です。
累積相対度数分布図では、95%に相当する値(p95)を90%レンジの上端値(L5)、5%に相当する値(p5)を90%レンジの下端値(L95)といいます。騒音分野で使われる L5 や L95 は、統計学で用いられる p95 や p5 と、ちょうど数値が逆になっています。統計学を学んだ人にとっては少し混乱しやすいところですが、L5は「大きい方の値」、L95は「小さい方の値」と覚えておくと理解しやすいと思います。

5秒50回法は過去の測定方法になってしまいましたが、この考え方は、現代でもしっかり残っています。
現在の JIS Z 8731:2019 においても、発生ごとの最大値が変化する衝撃音などでは、各発生音の最大値(LAFmax)を集め、その90%レンジの上端値(LAFmax,5)を求める考え方が用いられています。
もっとも、現代は解析ソフトやエクセルなどを使えば、累積相対度数分布図を作成しなくても、正確な値が求められます。
しかし、累積相対度数分布図は、音のレベル範囲やばらつき、異常値などを可視化できるため、現代においても、累積相対度数分布図を作成することが推奨されている場合もあります。
衝撃音は音の特性としては、継続時間が1秒以下の音として整理できますが、鳥の鳴き声やブザー音、人の咳払いなども、同じように衝撃性のある音なので、データの数値やレベル変化だけでは、それが測定対象の衝撃音であるか、それ以外の音であるかの区別ができません。そのため、「本当に対象とする衝撃音なのか」を確認しながら測定する必要があるのですが、対象の衝撃音であるか否かの判断は人の耳に頼るしかありません。
現代の測定技術であっても、衝撃音の測定においては、人が耳で聞きながら、一つ一つ確認しながら測定する必要があります。
その行為は、まるで当時の5秒50回法と同じように、地道で泥臭い行為となります。
測定器が示す数値の裏に、対象の音以外が紛れていないか。それを自分の耳で確かめながら測定することは、今も昔も変わらず大切だと感じます。