いつ発生するか分からない音の測定方法

道路騒音や工場・事業場騒音とは異なり、生活騒音は発生のタイミングや頻度に規則性がない場合が多く、特定の時間に測定しても対象の音を捉えられないことが少なくありません。 特に、調停などの場では、音の大きさだけでなく、その発生頻度も重要な判断要素となります。

生活騒音は、当事者の生活サイクルに依存するため、発生パターンを事前に予測するのは困難です。 そのため、測定日を決めて訪問しても、対象の音が発生しないという事態も起こり得ます。かといって、音が発生したタイミングでご連絡いただいても、すぐに駆けつけられるとは限りません。たとえ迅速に対応できたとしても、準備や移動には時間がかかってしまいます。

このような課題に対応するためには、一定期間を設定し、継続的に測定を行う方法が有効です。

数日間の連続測定

数日間の連続測定と聞くと、大掛かりなものを想像されるかもしれませんが、ご依頼主様にご協力いただくことで、比較的容易に実施する事ができます。

具体的には、発生タイミングが不明な騒音に対し、例えば1週間の測定期間を設定し、対象音の発生が確認できた時点で測定を終了するといった方法です。 この方法なら、早い段階で対象音が確認できれば、測定期間が短縮され、費用の抑制にもつながります。

連続測定の方法

長期間にわたる連続測定を成功させるためには、ご依頼主様のご協力が不可欠です。

測定者の主な役割は、測定機材の設置、日々のデータチェック、そして測定終了時の機材回収です。測定期間中の音はすべてデータレコーダーに録音され、測定終了後、分析ソフトを用いて録音データを確認し、騒音レベルの波形を分析します。

ここでご依頼主様にお願いしたいのが、「いつ、どのような音(例:ドンッ、バンバンなど)が発生したか」という記録です。

騒音計は、測定中のすべての音を0.1秒ごとに数値データとして記録しています。 しかし、この膨大なデータの中から、実際に音を聞いていない測定者が、対象音だけを正確に選び出すことは非常に困難です。 録音データを後から聞き返すことで、疑わしい音を特定することは可能ですが、それが本当にご依頼主様が問題とされている「対象音」であるかは、分析者だけでは判断できません。

騒音に悩まされているご本人であれば、どの音が問題の音なのかを明確に識別でき、誤認する心配もありません。 当事務所の事例でも、ご依頼主様が日頃から詳細な記録を付けていらっしゃったケースがあります。 ご依頼主様ご自身による記録があれば、第三者である測定・分析者も対象音を正確に特定でき、さらに、録音された音をご依頼主様に確認していただくことで、分析対象が間違いなく問題の音であることを保証できます。

このプロセスは、分析結果がご依頼主様の懸念する音に基づいていることを確認するために不可欠であり、調停資料としての信頼性を高める上でも極めて重要です。

測定結果の提出内容

測定結果の評価方法としては、音の特性に応じて使い分けます。

  1. 不規則かつ大幅に変動する音(テレビの音や会話音など):
    • 90%レンジ時間率騒音レベルの上端値である「L5​」を用います。
  2. 衝撃性のある間欠音(ドスン・バンバンといった音で、最大値が一定でないもの):
    • 各衝撃音の最大値を対象とした90%レンジの上端値である「LA.Fmax.5​」を採用します。

これらは似た評価指標に見えますが、「時間率」で評価するか「最大値」で評価するかによって、分析方法や結果は大きく異なります。

これらの評価値に加え、対象音が発生した時間帯の騒音レベル波形も記録します。 この波形記録は、対象音が発生ている時間に対し、通常10分から30分単位で作成します。 これを対象音が発生している間、繰り返し行います。 これにより、客観的なデータに基づいた、生活騒音の実態を詳細に把握することが可能となります。

下図は当事務所で行った長期間測定の事例の中から、対象音が発生したタイミングの騒音レベル波形の分析結果です。

この事例では、衝撃音の最大値は、平均すると 40dB 程度です。 環境基準においては、就寝時間帯の室内騒音基準(指針値)が 40dB以下となっていますので、レベルの大きさだけを見ると、それほど大きな音ではないと感じてしまうかもしれません。

しかしながら、このレベル波形図を見れば、背景騒音(暗騒音)が 20dB 以下の非常に静かな環境で、それより 20dB 以上も高い衝撃音が「頻繁に発生している」という事実がはっきりと読み取れます。 しかもこれが深夜0時台である事を客観的に示されれば、「うるさくない」と感じる人は少ないのではないでしょうか。

さらに、波形データと対応する録音データを組み合わせることで、波形を見ながら実際の音を視聴することが可能です。 実際の音を聞いていただくことは、騒音問題に詳しくない方々(調停委員など)に、騒音の実態を直感的に理解してもらう上で非常に有効な手段となります。

レベル波形は、対象音が発生しているすべての期間を記録するため、時には数時間分にも及ぶ膨大なデータ量になることがあります。 当事務所の実例では、2日間の連続測定データが報告書となり、そのページ数が 60 ページを超えたこともあります。

長期間測定の費用

長期間測定の費用は、以下のようになっています。

  • 基本料金:最初の24時間までは、通常の測定費用と同じです。
  • 延長料金:24時間を超える場合、24時間ごとに延長料金が加算されます。

具体的な費用は、測定箇所数や測定内容によって異なりますので、事前に詳細なお見積もりを提示いたします。

測定期間中の流れと費用確定のタイミング

  1. データ確認:測定開始後、基本的に24時間ごとにデータの確認を行います。
  2. 延長の確認:その際に、ご依頼主様と相談の上、測定を延長するかどうかを決定します。
  3. 測定終了:もし十分なデータが取得できた(対象音が発生した)と判断されれば、その時点で測定を終了します。

例えば、測定開始から24時間以内に終了した場合は、基本料金のみとなり、延長料金はかかりません。24時間を超え、48時間以内に終了した場合は、基本料金に1日分の延長料金が加算されます。

安心の料金体系

費用は測定期間に応じて変動しますが、最初のお見積もりで基本料金と延長料金の単価を明確に提示いたしますので、想定外の追加料金が発生することはありません。 また、延長を決定する際には、その都度、費用をご確認いただき、ご希望に応じてお見積書を発行しますので、最終的な請求額が見積もりと異なることもございません。

測定に関するご相談やお見積もりは無料ですので、どうぞお気軽にお問い合わせください。