この記事は、『距離減衰の考え方』の関連記事として、空調機器などの仕様書やカタログに書かれた音響パワーレベルの値を基に、距離減衰の計算方法を解説しています。
詳しい定義や基本式は省略し、実務で使う事を前提として、できるだけ直接的にまとめています。
計算式は、エクセルにそのままコピーできる形にしていますので、必要な箇所をセルに置き換えてご使用ください。
1.音響パワーレベルとは何か
音響パワーレベルとは、音源そのものが持つ音の大きさを表す値です。
1m や2m などの測定位置で得られた騒音レベルとは違い、距離の条件を切り離して扱えるため、距離減衰計算や複数台の統合計算に使いやすい、という利点があります。
2.音響パワーレベルを用いた距離減衰
問題となる機器の仕様表に書かれている値が、音圧レベルなのか、音響パワーレベルなのかを確認します。
仕様表に PWL と明記されていれば、音響パワーレベルとして扱います。
| 項目 | 値(例) | 見方 |
|---|---|---|
| 運転音(冷房/暖房)(PWL) | 79 / 81dB | PWL と書かれているので、音響パワーレベルとして扱う |
| 計算に使う値 | Lw=79dB または 81dB | ここから任意地点の距離減衰計算を行う |
| 距離減衰式 |
=Lw-20*LOG10(r)-11+K
r:音源中心からの距離
K:設置条件による補正値
自由空間:0dB(煙突の排気口や鉄塔上部の機器・航空機の音など)
床上:3dB(広い空間の地面に置かれた場合)
壁際:6dB(壁際の地面に置かれた場合)
壁と壁の角の地面:9dB(床と2つの壁に囲まれた隅に置かれた場合)
|
|

このように、音響パワーレベル(PWL)を用いた計算では、基準距離を考える必要がなく、音源中心からの距離をそのまま入れればよいため、複雑な距離減衰計算でも扱いやすくなります。
例えば、対象機器が複数台ある場合は、音響パワーレベルにそろえておく方が、統合して計算できるという利点があります。
次項では、基準距離で示されたレベルから、音響パワーレベルを求める方法をご紹介します。
3.音響パワーレベルの求め方
基準距離で示されたレベルからは、以下の式で音響パワーレベルを求めることができます。
=Lp+20*LOG10(r)+8
- Lp:基準距離での騒音レベル
- r:音源中心から測定点までの距離
- 仕様書などで、前後左右や上下左右など、複数点での基準距離の測定値が示されている場合は、それらを平均して当てはめます。dB の計算については、詳しくは こちら をご覧ください。
この計算は、反自由空間(床上)で測定された値を前提としています。
本来、音響パワーレベルは、無響室などの条件において、音源を中心とした球面上で測定して求められる値です。
ただし、現場での実測値や、仕様書などに基準距離で示された値を用いる場合は、実務上この式で求めることができます。
そのため、この計算式では、補正値 K を省略しています。
基準距離の値として示されるデータの多くが、建設機械や設備機器などを屋外または反自由空間で測定した値を前提としていると考えられるためです。
ただし、これと異なる条件で測定された値を用いる場合は、その差分に応じて K に反映して考える必要があります。
4.音響パワーレベルを用いる理由
音響パワーレベルは、設計段階での予測計算に役立ちます。
設計段階では実測ができないため、音響パワーレベルを基に、距離減衰や設置条件を考慮した、さまざまな予測計算が可能となります。
特に、種類の異なる機器や、複数台の機器を合成して計算する場合は、計算条件がそろうため、扱いやすくなります。
また、機器を建物内部に設置する場合においても、室条件の設定を行いやすいという利点があります。
5.FAQ
このページでは、
Lp=Lw-20×LOG10(r)-11+K
の形で表していますが、
Q で表す資料では、
Lp=Lw+10×LOG10(Q/4πr²)=Lw+10LOG10(Q)-10LOG10(4π)-20LOG10(r)≒Lw-20LOG10(r)-11+10LOG10(Q)
のような形で示されます。
ここで、
K=10LOG10(Q)
の関係があります。
例えば、Q=2 の場合は、
K=10LOG10(2)≒3dB
となります。
このため、
Q=1 → K=0dB
Q=2 → K=3dB
Q=4 → K=6dB
Q=8 → K=9dB
となります。
このページでは、実務的利用を目的に、計算しやすいよう dB 表示の K で統一しています。
Lp=Lw-10LOG10(r)-8+K
違いは、距離が2倍になった時の減衰量が、点音源では6dB、線音源では3dBになることです。
線音源、面音源などの条件の違いや、どのように使い分けるかについては、 『距離減衰の考え方』をご覧ください。
自由空間では音が全方向に広がりますが、床、壁、隅角のように反射面が増えると、音の広がる範囲が限られ、その分だけレベルが高くなります。
この違いを、設置条件による補正値 K として表しています。
6.まとめ
今回は、音響パワーレベルを用いた距離減衰の考え方について解説しました。
音響パワーレベルを用いた計算は、主に仕様書やカタログなどの情報を基に、設計段階での予測計算として用いられます。
ここで注意したいのは、予測計算である以上、計算誤差を見込んだ安全率を考慮する必要があるという事です。
どれだけ細かく条件を考慮しても、実際の結果がすべて計算通りになるとは限りませんし、前提条件の見落としが生じることもあります。
また、計算だけで終わらせるのではなく、施工後の実測値との差を確認することで、今の考え方が妥当だったのか、何を見落としていたのかを見直しやすくなります。
その積み重ねにより、次回以降の計算はより楽になり、精度も高めやすくなります。
どれだけ高性能なソフトを使っても、最終的には現地での確認が大切です。
実際に測定した値をもとに距離減衰を考える方法については、『距離減衰の考え方』もご覧ください。