その「音」を、見える形に。

 

騒音の国家資格者(環境計量士)が、騒音被害の実態を「可視化」します。

LA5 と LAFmax,5 の違いとは?|考え方をわかりやすく解説

LA5 と LAFmax,5 は、どちらも「90%レンジ上端値」と呼ばれる値ですが、対象としてる内容は全く違うものです。

特に、衝撃音を含む場合は、LA5 と LAFmax,5 で、レベルが大きく変わってしまうので注意が必要です。

ここでは、その違いを図を使いながら、出来るだけ優しく説明していきます。

※本記事では直感的に理解していただくことを優先し、専門的な定義や厳密な表現は一部簡略化しています。

LA5 とは何か

LA5 とは、時間率騒音レベルの 90% レンジ上端値を指します。

時間率騒音レベルとは、ある時間の中で、『測定時間のうち○%は、このレベルを超えていた』
というように、音の大きさを時間の割合で表す指標です。

具体的に説明すると、例えば 10分間測定した場合の LA5 とは、
10 分間のうち、この値を超えている時間の合計が、30 秒間となるレベルをいいます。
つまり、30 秒間は、このレベルを超えていた、という事になります。

下の図でいうと、 LA5 が 48.3dB であるという事は、
『測定した 10 分間の内、 30 秒間は 48.3dB を超えていた』という事がいえます。

同様に中央値(LA50)は、10 分間の半分にあたる 5 分間は 39.6dB を超えていた、
下端値(LA95)は、10分間のうち 9分30秒間は 37.8dB を超えていた、ということがいえます。

上の図は、LA5 の意味を見た目で分かりやすくした図です。
※レベル波形は実際の環境音のデータを使用しています。

LAFmax,5 とは何か

LAFmax,5 とは、衝撃性の音のみを対象として、90%レンジ上端値を求めたものです。

具体的には、発生した衝撃音ごとの F 特性最大値をあつめ、これらを累積相対度数分布図で整理し、
上位 5%にあたる値、すなわち p95 を求めた値、ということになります。

上の図は、100個のデータを用いて作成した累積相対度数分布図のサンプルです。
横軸に騒音レベル、縦軸に、そのレベル以下のデータが全体の何%あるかを示しています。

この図において、累積相対度数の95%に当たる値が『LAFmax,5(90%レンジ上端値)』となります。

たまにネット上で、「データが100個の場合、レベルの大きい順に上から5番目の値になる」
と説明されていることがありますが、それは誤りです。

LAFmax,5 は、単純な順位だけで決まるものではなく、
累積相対度数分布図の下から 95% に当たる位置から求める値です。

そのため、実際のデータの上から5番目とピタリと同じ数値になることは稀で、
上の図でわかるように、観測された数値と数値の間の値になることの方が多くなります。

実際にExcelで計算する場合、LAFmax,5は以下のような式で求めます。
=PERCENTILE.INC(A1:A100,0.95)

これは、100個のデータの中から「累積相対度数の95%となる位置の数値」を正確に割り出すための計算式です。
この式からも、「単純に大きい順に5番目をとる」という解釈が間違いであることが分かります。

2つは何が違うのか

環境確保条例では、測定方法を「日本産業規格 Z8731 に定める騒音レベル測定方法」とし、騒音の大きさの値を次のように定めています。

  • 条文の「3」 騒音計の指示値が不規則かつ大幅に変動する場合は、指示値の 90% レンジの上端の数値とする。
  • 条文の「4」 騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し、その指示値の最大値が一定でない場合は、
           その変動ごとの指示値の最大値の 90% レンジの上端の数値とする。

東京都ウェブサイト>環境局>日常生活の騒音・振動の規制より

どちらも「変動する音」を対象としているため、条例の説明だけでは分かりにくいところがあります。
そこで、総務省が公開している「騒音に関わる苦情とその解決方法」の図を用いて、もう少し具体的に見ていきます。

総務省>騒音に関わる苦情とその解決方法>第3回 音響の基礎:騒音の影響と評価・規制方法>P29 図8

この図から、それぞれを対象とする場合の評価の考え方が分かります。

  • 衝撃音を含まない変動騒音 の場合は 「LA5」(図の左側)
  • 衝撃音 を対象とする場合は 「LAFmax,5」(図の右側)

環境確保条例の測定方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
環境確保条例における測定条件

衝撃音ではどれほど差が出るのか

では、実際の現場の騒音の状態を例にとって、その違いを見ていきましょう。

下の図は、衝撃的な騒音が発生している 10分間の騒音レベル波形です。
レベル波形を見ると、衝撃的な音が複数回発生している様子が分かります。

この波形について、LA5 と LAFmax,5 の両方を求め、その結果を図中に示しました。
青い線が LA5 、赤い線が LAFmax,5 を表しています。

図が示す通り、青い線(LA5)が 64.9dB であるのに対し、赤い線(LAFmax,5)は 97.0dB となっています。

このように、同じ「90%レンジ上端値」の考え方に基づく評価であっても、
衝撃音を含む環境では、LA5とLAFmax,5のどちらを用いるかによって、これほど大きなレベル差が生じることになります。

なぜ現場では LA5 が使われやすいのか

実際の現場では、衝撃音が問題となっているにもかかわらず、
LA5で評価されているケースが少なくありません。

私自身、これまでの実務や相見積もりの内容を確認する中で、
対象が衝撃音であるにもかかわらず「LA5」を前提に説明している業者をたびたび目にしてきました。

なぜ、本来の対象音とは異なる LA5 が使われることがあるのでしょうか。
そこには実務上の複雑な事情が絡んでいます。

理由の一つは、測定と解析にかかる「手間の違い」です。
LA5 は演算機能付きの騒音計や解析ソフトで機械的に算出できるのに対し、
LAFmax,5 は対象となる衝撃音を一つずつ確認して整理する必要があるため、解析に大きな手間がかかります。

もう一つの理由として、「測定結果の再現性の重視(属人性の排除)」が挙げられます。
LAFmax,5 の評価は「どの突発音を対象として拾い上げるか」という測定者の判断が介在するため、
担当する環境計量士によって結果にバラつきが生じるリスクがあります。
一方、LA5 であれば機械的に一律の処理ができるため、業者(測定者)の違いによるレベルの差が出にくくなります。

現状、どちらの評価方法を採用するかは現場の環境計量士の判断に一任されていることがほとんどです。
公共の道路騒音などでは、業者間のバラつきを防ぐために複数の業者が同じ条件で測る
「相互比較測定」が行われる場合がありますが、一般的な民間の測定では費用面から現実的ではありません。
そのため、測定者による結果のブレを避ける目的で、あえて一律に LA5 を採用する実情もあるようです。

こうした実務上の事情やジレンマがあるのは確かです。
しかし、東京都の環境確保条例や JIS(日本産業規格)の規定を見る限り、
「不規則かつ大幅に変動する騒音」と「発生ごとの最大値が一定でない騒音(衝撃音)」は明確に区別されています。

実務上の都合があるにせよ、騒音苦情が伴っている場合の測定であるなら、
条例やJISの本来の考え方に準拠し、対象となる音の性質に最も合った評価方法を採るべきだと私は考えています。

これから測定を依頼する事を考えている方は、気になっている音が「衝撃音」なのか、
それとも「衝撃音を含まない変動騒音」なのかを、測定業者に具体的に伝えたうえで、
どの評価方法で整理するのかを確認してみてください。

また、すでに測定を受けていて結果に疑問がある場合は、
数値の大小だけでなく、その数値が LA5 なのか、LAFmax,5 なのかも確認することが大切です。

衝撃音が問題であるのに LA5 だけで評価されている場合は、
その結果が本当に対象音を表しているのかを見直し、
必要に応じて評価方法を含めた再確認や、再測定を検討した方がよいと思います。

おまけ|90%レンジ上端値を求めてみよう

この章では、スマートフォン(騒音計アプリ)や簡易騒音計を使って、
ご自身で「90%レンジ上端値」を求めてみる方法をご紹介します。

ただ騒音計の数値を眺めているだけでは、その音がどのように評価されるのかは分かりにくいものです。
また、これまで書き留めてきた日々の記録を整理する事で、
「自分の環境の音はどう評価されるのか」という一つの目安が見えてきます。

【90%レンジ分析用紙】
このページでは、測定値を1dBごとに並べて度数と累積度数を作成し、
そこから上端値・中央値・下端値を読み取るための「記録用紙」を無料で配布しています。

90%レンジ分析用紙
記入例

【記録用紙の使い方】
使い方は、騒音分野で古くから用いられてきた「50回法」をベースにしています。
目的に合わせて、以下の2通りの方法で50個のデータを集めて記録します。

  • 時間率騒音レベル(LA5など)を求めたい場合
    騒音計の表示特性を「Fast」にし、5秒ごとに表示されている数値を読み取って、50個採取して整理します。
  • 発生音ごとの最大値(LAFmax,5など)を求めたい場合
    対象となる音(衝撃音など)が発生した時の最大値を50回分集めて、同じように整理します。

【この用紙をご利用いただくにあたって】
本来の厳密な整理方法は一般の方には少し分かりにくいため、この用紙は考え方がつかみやすいよう、
できるだけ見やすく整理しやすい形に簡略化した「補助用紙」となっています。
そのため、正式な図表そのものではありません。

あくまで、「90%レンジ上端値とは何か」を視覚的に理解しやすくするためのツールとしてご活用ください。