その「音」を、見える形に。

 

騒音の国家資格者(環境計量士)が、騒音被害の実態を「可視化」します。

環境確保条例における測定条件

環境確保条例には、音の状態に応じた4つの測定方法が定められています。
どの方法を選ぶかによって、結果は大きく変わるため、正しい測定方法を選択する事が重要です。

4つの測定方法の違いの要約

項目 音の性質 代表的な例 評価量
1 定常騒音
(変動が少ない)
エアコン室外機、給湯器など 指示値
(LA50,LAeq)
2 間欠・衝撃騒音
(最大値がおおむね一定)
工場のプレス機など LAFmax,ave
3 変動騒音
(不規則かつ大幅に変動)
音楽、テレビの音、
話し声など
LA5
4 間欠・衝撃騒音
(最大値が一定でない)
資材の荷下ろし作業音
ゴルフの練習音
LAFmax,5

この記事では、この表の根拠や考え方について、具体例を交えながら詳しく解説しています。

測定位置や対応区域については、別の記事で解説していますので、合わせてご覧いただければ幸いです。

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測定方法

下記の図は、東京都環境確保条例における「日常生活等の騒音測定方法」と、
総務省資料に示された測定方法の対応関係を整理したものです。

東京都の条例における説明文と、総務省による測定方法の図説を照らし合わせることで、
測定方法への理解を深めやすくなります。

測定方法の詳細な規定については、以下の東京都公式ウェブサイト、
および総務省の資料にて確認いただけます。

項目 環境確保条例第136条 別表13 一 騒音より 総務省『騒音に関わる苦情とその解決方法』
第3回 図8より一部抜粋
1 騒音計の指示値が変動せず、又は変動が少ない場合は、その指示値とする。
定常騒音の図
2 騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し、その指示値の最大値がおおむね一定の場合は、その変動ごとの指示値の最大値の平均値とする。
発生ごとの最大値がほぼ一定の衝撃騒音の図
3 騒音計の指示値が不規則かつ大幅に変動する場合は、指示値の90%レンジの上端の数値とする。
不規則かつ大幅に変動する騒音の図
4 騒音計の指示値が周期的又は間欠的に変動し、その指示値の最大値が一定でない場合は、その変動ごとの指示値の最大値の90%レンジの上端の数値とする。
発生ごとに最大値が変化する衝撃騒音の図

この図からお分かりいただけるように、環境確保条例やJIS規格における測定方法は、
「何の音か(音源の種類)」ではなく、「どのように変動する音なのか」によって決まります。

例えば、エアコンの室外機であれば、一般的には「定常的な騒音」として項目1の方法が適切です。
しかし、経年劣化等でガタガタと異音を伴う場合は、項目3のような評価が必要になることもあります。

また、隣地の駐車場に出入りする車の音などは、一般的に「変動する騒音」として項目3が適していますが、
ドアの開閉音や資材の積み下ろしに伴う「衝撃音」が問題であれば、項目4の考え方が適切となる場合もあります。

このように、騒音の状態と苦情の内容を照らし合わせ、
「何が問題で、どの音を評価対象とするのか」を整理した上で測定方法を選定することが重要です。

測定方法の選択理念

総務省の指針(『公害等調整委員会機関紙「ちょうせい」』)では、騒音の代表値について次のように述べられています。

騒音が人に与える影響を的確に評価するためには、このような時間的な変動特性を考慮して騒音レベルの代表値、すなわち騒音の評価量を決める必要がある。

この指針から、音の状態に応じて測定方法が異なる理由は、「人に与える影響を的確に評価するため」であると考える事が出来ます。

したがって、実務において最も重要なのは、対象となる音の性質を最も的確に捉えられる手法を選択することです。
判断に迷う事案においては、「生活環境の保全の観点から、事例ごとに合理的に判断する」という基本理念に基づき、実態に即した評価量を選択することが極めて重要となります。

実務における測定方法の考え方

実際の測定では、条例の規定を守りながら、総務省の資料が示す考え方に沿って評価方法を選びます。

ただし、実際の騒音の現場は複雑で、騒音も一様ではありません。
音の性質を見極め、どの手法が適切かを判断するには、知識だけでなく現場経験も必要になります。

重要なのは、「なぜその測定方法を選んだのか」を論理的に根拠をもって説明できることです。

ここからは、私がこれまでの実務の経験をもとに、それぞれのケースにおいて具体的に詳しく解説します。

項目1:定常騒音【LA(LA50/LAeq)】

条例文では「変動が少ない場合は、その指示値とする」とされています。
一見すると簡単そうですが、実際の測定では、定常騒音であっても、騒音計の表示がまったく動かないということは稀です。

特に屋外では、風向きや周辺環境音の影響で、レベルは常に揺れ動いています。
そのため、指示値をそのまま記録するのではなく、一定時間の LA50 または LAeq を記録する事になります。

JIS Z 8731:2019 では、定常騒音の測定方法として、『一定時間の等価騒音レベルを求める』としています。

しかし、現場の感覚としては、特に指定がない場合は、まず LA50 を基本に考えてよいと思います。
その理由は、わずかなばらつきがある音では、LAeq は一時的な大きめの音に引っ張られやすいため、
「指示値を読む」という意味では、中央値である LA50 のほうが、安定した値として見やすいからです。

もっとも、本当に安定した定常騒音であれば、LAeq と LA50 は、ほぼ同じ値になります。
もし両者に目立った差がある場合は、その音がそもそも定常騒音と言い切れない可能性もあるため、
音の状態をもう一度よく見直した方がよいと思います。

改定前の JIS Z 8731:1999 では、指示値が 5dB を超える範囲にわたって変動する場合は、定常騒音として扱えないとされていました。改定後の 2019年版では、この点を明確に変更した記述は確認できていないため、実務上は今でも 5dB を一つの目安として考えてよいと思います。

項目2:最大値がおおむね一定の衝撃騒音【LAFmax,ave】

条例の文章では「周期的又は間欠的に変動する騒音」として書かれていますが、
JIS Z 8731:2019 による説明では、間欠騒音・衝撃騒音についても、同じような測定方法が示されています。
したがって、ここは間欠騒音または衝撃騒音を対象とした項目と見ることができます。

間欠騒音、衝撃騒音どちらの場合も、その最大値を読み取り、平均値を求めます。
騒音の平均は、エネルギー平均(パワー平均)を用いる事が基本です。

参考までに、Excel で等価騒音レベルを求める場合の式は、次のようになります。

=10*LOG10(AVERAGE(10^(A2:A11/10)))

ただし、JIS Z 8731:2019 によれば、『最大値がほぼ一定の場合は、数回の平均値で表示する』としています。
項目2の場合は、「最大値がおおむね一定」な騒音を対象としているので、
最大値のばらつきを見て、ほぼそろっているなら、算術平均でもよいと思います。

項目3:不規則かつ大幅に変動する騒音【LA5

一般的な環境騒音の多くは、これに当てはまります。
例えば、道路騒音や人の声、音楽などは、不規則に大きさが変わることが多く、項目3で考えるのが自然です。

測定方法は、演算機能のある騒音計であれば、一定時間の LA5 を読み取ります。
実務的には、100ms ごとに記録したデータを PC ソフトで処理し、必要な時間の LA5 を読み取ります。

演算機能のない騒音計の場合は、50 回法などの方法で求めることも出来ます。
下記のページでは、50 回法による記録用紙も配布していますので、ご興味のある方は御一読いただければと思います。
→ LA5 と LAFmax,5 の違いとは?

項目4:不規則かつ大幅に変動する衝撃騒音【LAFmax,5

ここが条例の測定方法において、一番誤解が多い項目です。

LA5 と LAFmax,5 は、条例内でどちらも「90% レンジの上端値」と紹介されています。
しかし、前者は時間率、後者は最大値を対象としているので、測定方法はもちろん、結果も違ってきます。

項目 条例内容 違い 測定方法
3 指示値の90%レンジの上端の数値 時間率 LA5
4 最大値の90%レンジの上端の数値 最大値 LAFmax,5

以下のページでは、LAFmax,5 の測定方法はもちろん、LA5 との違いについても詳しく解説しています。
これから測定を依頼しようと考えている方にも、測定の結果に疑問や不満を感じている方にも、一度ご覧いただきたい内容です。
→ LA5 と LAFmax,5 の違いとは?

測定条件に付いて

条例に基づく騒音測定では、使用する騒音計や測定の条件が明確に定められています。

東京都環境確保条例第136条 別表13 一 騒音より一部抜粋

上の図は、条例で定められている測定方法の全体像です。
内容を正しく理解するためには、まず測定に使う騒音計や、測定条件の意味を押さえておく必要があります。
下表では、その前提となる測定条件について整理します。

項目 説明
計量法第71条の条件に合格した騒音計 検定を受けた騒音計のことです。つまり、検定のない簡易的な騒音計や、スマホの騒音計アプリで測った値を、そのまま条例の基準と比べて評価することはできません。
A特性 人の聞こえ方に近づけるよう補正した騒音レベルのことです。他には C特性 や Z特性 もあり、これらを間違えると、まったく別の値になります。測定値を比較するときは、周波数補正が何になっているかを必ず確認する必要があります。
速い動特性 FAST 一般的な騒音に対する測定条件の一つです。ちなみに、遅い動特性 SLOW もあり、こちらは航空機騒音や鉄道騒音など、特殊な測定で用いられます。
日本産業規格 Z8731 ここまで説明してきた JIS Z 8731:2019 のことです。条例に指示がない部分は、この JIS に沿って考えることになります。

一般の方が、簡易騒音計やスマホアプリを使って、ご自身で音を測ること自体は可能です。
先ほどのページで配布している資料を参考にすれば、LA5 や LAFmax,5 を求めて、おおよその見当をつけることもできます。

ただし、その結果をそのまま公の場で使ったり、第三者に提出する資料にすることはできません。

こうした条件を満たし、必要な知識と経験をもって測定を行う専門機関が、都道府県知事の登録を受けた『計量証明事業所』です。

その他の重要事項について

今回は「東京都環境確保条例」における測定方法を中心に解説してきましたが、
条例を正しく解釈するには、他にも考慮すべき項目があります。

例えば、「どの位置で測定すべきか」という地点の選定や、ご自身の敷地が「どの規制区域・地域区分に該当するのか」の確認、
さらには「特別地域」に該当するのかなどです。

これらの項目については、別のページで詳しく解説しています。

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